FM、AM、SW送信所の出力差:なぜこんなに大きな差があるのか?
FM、AM、SW送信所では送信出力に大きな差があります。FM送信所は比較的低い出力であり、逆にAMやSW送信所は数百kW以上の高出力を使用する理由は、周波数ごとの電波の特性と伝播方式の違いによるものです。
1. 周波数別の伝播特性と出力差
区分 | FM(超短波) | AM(中波) | SW(短波) |
---|---|---|---|
周波数帯域 | 88~108MHz | 531~1602kHz | 3~30MHz |
波長 | 3.4~2.8m | 564~187m | 100~10m |
電波の伝播方式 | 直進波(Line-of-Sight) | 地表波(Ground Wave)+一部は電離層反射(Skywave) | 電離層反射(Skywave) |
一般的な送信出力 | 数百W~数十kW | 数十~数百kW | 数百kW以上 |
受信距離 | 数十km以内 | 数百km(夜間はさらに遠く) | 数千km以上(国際放送) |
2. FM送信出力が低い理由(5~50kW級)
FM放送は主に「直進波(Line-of-Sight)」方式で伝播されます。
FMは**88~108MHz(VHF帯)**で送信され、波長が短く直進性が強いため、送信所と受信アンテナが互いに見通せる状態(視距離内)でのみ信号が届きます。高いビルや山によって信号が遮断される可能性が高いため、出力を高くしても、伝播距離はそれほど長くなりません。通常、数十kW以下の出力でも十分であり、韓国では1~10kW程度の送信機が使われることが一般的です。大規模な送信所でも50kW程度の出力です。
また、FMは周波数変調(FM)方式を採用しており、音質を重視するため、出力が低くても音質がクリアに聞こえる特徴があります。
3. AM送信出力が高い理由(50~500kW級)
AM電波は「地表波(Ground Wave)」と「電離層反射(Skywave)」を利用して伝播します。
中波(531~1602kHz)は波長が長く、地表を沿って遠くまで広がる地表波特性を持っています。昼間は地表波で数百kmまで届き、夜間は電離層反射により数千kmまで届きます。そのため、AM放送は高い出力(50~500kW)を必要とします。
また、AM信号はノイズ(雷、電気機器、ネオン看板など)に弱いため、高出力で安定した受信が可能になるのです。例えば、韓国のKBS(韓国放送公社)の一部のAM放送局では、出力が500kWにも達しています。
4. SW送信出力が最も高い理由(100~1000kW級)
短波(SW)は電離層反射(Skywave)を利用して、非常に長距離まで伝播します。国際放送や長距離通信(アマチュア無線、軍用通信など)で使用されます。SW信号は変動が大きいため、高い出力が必要です。太陽活動や季節、時間帯などによって電離層の状態は変動するため、安定した長距離伝送を行うためには高出力が求められます。一般的に、100~500kW級の送信機が使用されます。
たとえば、VOA(アメリカの声)、BBCワールドサービス、中国国際放送(CRI)などの放送局は500kW以上の送信機を使用しています。
5. 送信所近くでは電子波の影響が大きいのか?
出力が高くても、電波は広く分散するため、送信所近くであっても人体に対する影響はほとんどありません。AMおよびSW送信所は通常、都市から遠く離れた場所に設置されており、送信塔の周囲数百メートル以内には立ち入り制限が設けられている場合が多いです。
6. 送信所近くのノイズや電磁的干渉(EMI)は?
AM/SW送信所近くでは、スピーカーや電話機、電気機器にノイズが混じることがあります。例えば、AM放送が薄く聞こえることがあり、スピーカーをオフにしても音声がかすかに入ることがあります。
7. 結論:送信出力差の理由
- FMは直進波で伝播するため、低出力(数十kW以下)でも十分です。
- AMは昼間は地表波、夜間は電離層反射を利用するため、50~500kWの高出力が必要です。
- SWは超長距離伝送のため、電離層反射を利用し、500kW以上の高出力が使用されます。
送信所近くでの人体への影響は少ないですが、電磁的干渉(EMI)などの問題は発生することがあります。
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