この画像は、CPUの熱伝達性能(HTC)と熱フラックス(Heat Flux)に関する科学的なデータを示しています。主に2つの部分から構成されています:
(a) グラフ & 表の分析
グラフ(左側)
- X軸:Heat Flux q′′ (W/cm²)
- CPUから放出される熱量(単位面積あたり)。
- 一般的に、高いクロック速度と高い消費電力(TDP)を持つCPUは、高い熱フラックスを持っています。
- Y軸:Heat Transfer Coefficient (HTC, W/m²K)
- CPUがどれだけ効率的に熱を放出するかを示す指標。
- HTCが高いほど、熱の伝導が速くなります。
曲線の挙動:
- HTCは最初に急激に増加し、その後、一定のレベルで徐々に増加する傾向があります。
- 熱除去方法(空冷、液冷など)によってHTCの値が異なります。
表示された領域:
- NC Air(自然対流空気冷却):自然対流を利用した空冷
- NC HFE(自然対流HFE):自然対流を利用した特殊液体冷却
- FC Air(強制対流空気冷却):ファンを使用した強制空冷
- FC/Boiling HFE(強制冷却 + 液体沸騰現象):強制冷却と液体の沸騰現象を利用
CPU Heat Flux Range(緑色の領域):
- 現在一般的なCPUが発生する熱フラックスの範囲(0~110 W/cm²)。
- ほとんどのCPUは強制空冷(FC Air)の下で動作するレベルです。
表(右側)
- この表は、さまざまなCPUの熱特性を比較したデータです。
Lc (mm) | TDP (W) | Heat Flux q′′ (W/cm²) |
---|---|---|
主なパターン:
- 高性能CPUほど、高いTDPと熱フラックスを持ちます。
- 例:Intel i9-12900K (Turbo) → TDP 241W, q′′=112.0 W/cm²
- 例:AMD Threadripper 3960X → TDP 280W, q′′=94.6 W/cm²
- CPUダイのサイズ(Lc)が小さいほど、q′′(熱フラックス)が増加します。
- 例:Intel i7-7740X (Lc = 11.2mm, q′′=88.9 W/cm²)
- 小さい面積でより多くの熱を放出しなければならないため、熱密度が増加します。
- AMD Ryzenシリーズは比較的低いq′′を示します。
- 例:Ryzen 9 5950X → 64.0 W/cm²
- これはAMDのダイ設計(チップレット構造)による可能性があります。
(b) CPU熱伝達モデル(右側の図の分析)
この図は、CPU内部の熱抵抗モデルを示しています。
構成要素:
- Die(CPUコア、赤色):最も高い熱フラックスを持つ部分。
- TIM1(Thermal Interface Material 1、黄色):CPUダイとIHS(ヒートスプレッダ)の間の熱伝導物質。
- IHS(Integrated Heat Spreader、緑色):CPUの表面を覆う金属板で、熱を均等に広げる役割を果たします。
- TIM2(Thermal Interface Material 2、黄色):IHSとヒートシンクの間の熱伝導物質。
- Heat Sink(灰色):CPUから放出された熱を吸収し、空気または液体に伝達します。
熱抵抗経路:
- 熱の流れ(QQ)は、CPU内部から放熱板へ移動する際に、いくつかの熱抵抗要素を通過します。
- RDie、RTIM1、RIHS、RTIM2、RHEXの順で熱抵抗が存在します。
- TIM(熱伝導物質)が良好でないと、熱抵抗が増加し、熱放出が困難になります。
結論と主要な示唆
- CPUの熱フラックス範囲は約50~110 W/cm²であり、ほとんどの空冷方式で処理可能です。
- 高性能CPUは高いTDPを持ち、ダイサイズが小さいほど単位面積あたり放出される熱量が増加します。
- 熱伝達性能を向上させるためには、TIM(熱伝導物質)とヒートシンクの品質が重要です。
- 強制対流冷却(FC Air)以上の冷却方式が必要なCPUが増えてきています(例:i9-12900K、Threadripper 3960X)。
- CPUの熱管理のために、熱抵抗(R)要素を減らすことが重要です(例:液体金属TIMの使用)。
- このデータは、CPUの熱管理戦略を立てる際に有用であり、空冷および水冷システムの設計に重要な情報を提供します。
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