結論から言えば、現在のところ3.5インチHDDが容量対効率が最も高いフォームファクターです。このフォームファクターが長年標準として定着した背景には、技術的、経済的、物理的な理由が複合的に作用しています。
1. 3.5インチHDDが容量面で最も効率的な理由
1. プラッター(ディスク)サイズと保存容量
- HDDの容量はプラッター(ディスク)のサイズと枚数によって決まります。
- 3.5インチプラッターは2.5インチプラッターより面積が広く、より多くのデータを記録できます。
- プラッター1枚あたりの記録密度が同じであれば、大きなプラッターを使う方が保存容量の面で有利です。
例:
- 3.5インチHDD – 最大26TB(WD、Seagate)
- 2.5インチHDD – 最大5TB(ポータブル外付けHDD)
2. マルチプラッター構成が可能
- 3.5インチHDDは最大で11枚のプラッターを搭載可能ですが、
- 2.5インチHDDは最大5枚程度が限界です。
- プラッターの枚数が増えるとHDDの厚みが増しますが、3.5インチHDDは余裕があるためマルチプラッター構成が容易です。
2. 他のフォームファクターが登場しない理由
1. 物理的制約と技術的限界
- HDDは回転するプラッターと磁気ヘッドでデータを読み書きします。
- プラッターが小さくなると、**ヘッドの位置調整(シークタイム)**が難しくなり、コストが上昇します。
- 逆にプラッターが大きすぎると、回転時の振動やたわみが発生し、安定性が低下します。
➡️ 3.5インチは「大きすぎず小さすぎず」の最適なサイズとして定着しました。
2. 標準化と経済性
- 3.5インチと2.5インチのフォームファクターは数十年にわたって標準となっています。
- データセンター、サーバーラック、NAS機器などはこの2つのサイズに合わせて設計されています。
- 新しいフォームファクターを開発する場合:
- 製造コストの増加
- 既存インフラとの互換性の問題
- 市場需要の不足
➡️ 経済的に見合わないため、メーカーは新フォームファクターの開発を避ける傾向があります。
3. 競合技術の台頭(SSD)
- 高性能、小型化、迅速なデータアクセスが求められる分野では、SSDがHDDを置き換えつつあります。
- HDDは大容量ストレージに特化しており、保存容量を最大化する方向で進化しています。
- 3.5インチフォームファクターでプラッター密度を向上させることが最もコスト効率の良い方法です。
3. フォームファクターの変化はあるのか?
- 今後、HDDのフォームファクターが変わる可能性は低いでしょう。
- しかし、HDD技術の進化は続いています。
例:
- HAMR(熱アシスト磁気記録)
- MAMR(マイクロ波アシスト磁気記録)
- デュアルアクチュエータ技術(ヘッドを2つに増やし性能向上)
➡️ 既存の3.5インチフォームファクターで30TB、40TB以上の容量を実現する方向で進化していくでしょう。
結論
3.5インチHDDは容量対効率が最も高い標準フォームファクターとして確立されています。
物理的な制約、経済性、標準化の問題から、新しいフォームファクターが登場する可能性は低いです。
大容量ストレージは3.5インチHDD、高速ストレージはSSDという分業体制がしばらく続くでしょう。
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